南フランスワインレポート
店主まーちゃんがゆく・・3


●ドメーヌ・ド・モンヴァック

本日最後のワイナリーはドメーヌ・ド・モンヴァック。ギリシャ・ローマ時代にワインを入れていたアンフォーラという壷を描いたかわいい看板の向こうには、クリーム色のすっきりした佇まいを見せる建物がありました。このワイナリーの先祖は樽職人で1930年代から樽にワインを入れて販売していたそうです。オーナーのジャン・デュセール氏はワインの世界とは無縁でしたが、結婚してこのドメーヌに入りエノローグ(醸造家)の免状を取得。現在は娘のセシルさんが継いでいますが、彼女の世代もまたご主人が醸造を担当していらっしゃいます。

瓶詰め作業 ドアを開けると、セシルさんがにこやかに出迎えてくれました。早速醸造設備を見学させて貰います。カシャンカシャンと大きな音が聞こえてくるのは、ワインの瓶詰め作業でした。瓶詰めの機械自体は見たことがありましたが、実際に瓶詰めを見るのはこれがはじめてでした。大きな機械にはからの瓶が並んで動いてきます。機械にはホースが繋がっていて、12個ある詰め口(写真の左側)にボトルが差し込まれると赤いワインがサッーと注がれ、コルクをする部分(写真の右側)に流れて行き、あっという間にコルクが打たれてまた流れていきます。機械の終わりのところに人が待っていて、出てきたワインをパレット積みしていました。この後は瓶熟を経て、ラベルを貼り、世界中に出荷されていくという訳です。

この蔵は、今までみてきた中では醸造スペースがかなり広い上に、1階と地下に分かれていました。実はこれがミソなのです。1階には醸造タンクがあり、その足元に蓋が並んでいます。この蓋は地下にある熟成タンクの上部になっていて、出来たワインを簡単に熟成タンクに入れることが出来るようになっていました。

地下に降りるとさっき1階で見た蓋の本体である熟成タンクの部屋になっているのですが、このタンクはステンレスタンクをコンクリートの壁で覆っているので、一見すると壁に小窓とレバーがついているだけです。もし、何も知らないでこの場所に連れて来られたら、一体何のための場所なのか見当がつかないと思います。セシルさんの説明を聞いて「ほぉー」っと関心してしまいました。

樽の部屋 続いて樽の置いてあるところに行きました。私の背丈ほどもある大樽(写真の右端の焦げ茶色の樽)が置いてあり、セシルさんが「これおじいちゃんが造った樽なのよ」と教えてくれます。その樽は今では飾りのようでしたが、現役中の樽も並んでいます。10個ほどは寝かされて置いてあり、上部はワインの色が付いていましたが、その奥には今朝届いたばかりという真新しい樽が立てておいてありました。ちなみに新樽は1個10万円ほどするそうです。結構するのね・・。
  

テイスティングのために1階に戻りました。黄色い壁と自然の石を使ったティスティングルームで、ヴァケラスを飲みました。ヴァケラスは90年にAOCに認められた比較的新しい産地ながら、コストパフォーマンスが良いものが多く、私は好きです。「語る」産地でないような印象ですが、それだけ地に足が着いているというか、「飲むために飲むワイン」である気がします。ここのヴァケラスも、素朴な甘さのコクとしっかりしたボディがあって美味しい!そして面白いのがヴァケラスの白。赤の産地なので、白はとても生産量が少なく珍しいのですが、セシルさんは思い入れがあるようで、「温度に気を付けて大切に造っている。今はちょっとしか造っていないけど、大切に造り品質を上げることで、お客さんがついてもっとたくさん造れるようになればいいなと思ってるの」と話してくれました。確かに繊細さがあり、赤の力強いおおらかさとは違う印象を持つワインでした。とても気に入ったので買って帰りたいというと、「1本あげるよ」と言われて貰ってしまいました。

袖口にフリンジのついたおしゃれなセーターを着ていたセシルさんは、明るくて感じの良いマダム。主人が「おしゃれですね」と褒めると、「今日は特別。畑にいる時はひどいのよ」と笑っていました。セシルさんの農作業姿というのも見てみたい気がします。

●8月29日(木) ドメーヌ・デュ・ペール・カボシュ
玄関 南仏のワイナリー見学も今日が最終日。1件目の蔵はドメーヌ・デュ・ペール・カボシュ。シャトー・ヌフ・デュ・パプにあります。なんとここのオーナーはシャトー・ヌフ・デュ・パプ村の村長さん(左の写真)なのです。この日も忙しいお仕事の合間をぬって、私達を案内してくれました。この蔵は1600年にすでに文献に登場しているという古い歴史を持ち、ワイン造りは1820年から。「カボ シュ」とは南仏の言葉で、馬の蹄に使う釘のことだそうで、先祖は蹄鉄工を営んでいたとのこと。ワイナリーの入口に、ビニールプールほどの大きさの蹄のオブジェがかかっています。味のある建物の中は意外とオフィス然としていてパソコンも何台か置いてありました。

シャトー・ヌフ・デュ・パプについてちょっとおさらいをしてみましょう。「シャトー」とつきますが、これはボルドーの「シャトー●●」などで使われる「蔵元」の意味とは違い、AOCの名前です。「シャトー・ヌフ・デュ・パプ=法王の新しい城」という名前どおり、14世紀にローマ法王がこの地に別荘を建て、まわりにミサ用ワインの葡萄を植えたのです。フランスが世界に誇るAOC制度(原産地呼称制度)生誕の地がここなのです。(1936年にAOC認定)力強く長期熟成に向く、赤ワインが多く産出される土地です。

まずは試飲からということで、半地下になっているテイスティングルームへ。使い込まれた焦げ茶色の大樽が5つ6つ並び、全ての樽には様々なコンテストの賞状が飾られています。小柄で温和そうなセラーマスターが、ブランデーグラスのようなグラスにシャトー・ヌフ・デュ・パプの白2001を注いでくれて試飲。シャトー・ヌフ・デュ・パプの一番の特徴は、許可品種が13種類もあるということですが、最近では、13品種全てを栽培している蔵は数えるほど。この蔵は、その数えるほど少ない貴重な存在の1件なのです。ここの白はブール・ブーラン40、クレレット25グルナッシュ・ブラン25、ピクプールとルーサンヌ10%というように、5品種を用いて造られています。樽熟せず、低温発酵でマロラクティック発酵(乳酸発酵。鋭い酸味のリンゴ酸を、温度を上昇させることにより円やかな乳酸に変化させる)も行わないため、すっきりとしたさわやかさを感じ、私が苦手な「南のボテッとした白」ではなくて美味しい!赤も使用品種は多く、グルナッシュ70,シラー15,ムールヴェードル7、サンソー8%・・。除梗(葡萄の粒の間の茎を取り除くこと)するのが主流の現代でも、この蔵は除梗なしで複雑さを出しています(ヴィンテージによっては除梗する年もあるそうです)。ヴィンテージ違いで2000年と2001年を試しましたが、さすがにどちらもまだ少し固さは感じました。このあと、上級品も試したところ、これも熟成した方がいいのは明らかながら、力強さが際立っていて、とても好みでした。そしてこの蔵でもうひとつ気に入ったのがヴァン・ド・ペイ。アンティーク調のラベル(案内の上田さんは「このラベル汚れてるんじゃないですか?」と言っていた・・。違うってば・・)がすごくおしゃれでプレゼンが良い上に、クセのない飲み易い味、お手頃価格と揃っており「これは売れるぞ!」と、商売人の血が騒いでしまいました(笑)。

  

ここの醸造設備の自慢は、「フランスで一番最初に採用した破砕機が上下するシステム」。トラックの荷台から葡萄を破砕機に入れると、それがエレベーターのように醸造タンク上部と同じ高さに上がり、ベルトコンベアーでそれぞれの醸造タンクの所まで運ばれて投げ込まれる仕組みなのです。前日に見学させて頂いたドメーヌ・ド・モンヴァックといい、みんな色々工夫しているんだなあと思いました。重労働ですから、少しでもラクが出来れば助かるでしょうね。

さて、村長の車に載って高台の畑へ。シャトー・ヌフ・デュ・パプの畑は、漬物石のような大きな石だらけであることで有名ですが、実は土壌は2種類あって、平地の畑はそれほど石だらけではありません。丘の畑が石だらけなのです。このあたりは太古の昔、ローヌ川の川底だったのです。畑は、特大の男爵いもが敷き詰められているような不思議な風景。このごろごろした石が、日中に太陽熱を蓄え、夜に熱を放出することにより積算温度が上がり、より熟した葡萄の収穫を可能にするのです。

村長は、「この木はグルナッシュ、こっちはシラー、これがグルナッシュ」と次々教えてくれるのですが、私にはどれも同じに見えます。「なんで区別できるんですか?」と聞くと、葡萄の葉を一枚ずつちぎって形の違いを見せてくれました。確かに形は違うけど、良く見ないとわからないので、やっぱりこれは経験の差でしょう。葡萄の実も良くみると微妙に色調が違います。そして、葡萄も食べ比べてみると、当たり前ですが全部味が違いまして、中でも「クノワーズ」という品種は味があまりありません。「これはあんまり味がしないですね」と言うと、「それがクノワーズの特徴で、糖度が上がるグルナ ッシュなどの緩衝材的な役割」とのことでした。うーん、奥が深いぞ!

写真を見て頂くときっと、「この畑、どうやって水を蓄えるんだろう?」と思うでしょう。ちゃんと石の下(かなり下ですが)に土の層がありますのでご心配なく。去年のドイツのスレートの畑でも思ったのですが、地球ってすごい!植物ってすごい!自然は偉大だ!と感じます。実際に葡萄畑に来ると、日々のワイン販売のこまごまとしたことに振り回される自分の小ささを感じずにはいられません。醸造技術(技術というより、テクノロジーという感じでさえある)は日々進歩していますが、やっぱりワインは畑で造られるもので、「良いワインは良い葡萄から」という基本がこれからもそうあって欲しいと願います。

  


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  モンヴァック看板
かわいらしい看板が出ています。クリーム色がイメージカラーのようで、建物もこれと同じ色。すっきりシンプルな印象です。


醸造タンク
左側が醸造タンクで、この足元に地下タンクにつながる蓋があります。右側は圧搾機。奥が瓶詰め作業場です。



地下熟成室
上の写真の醸造タンクの真下が、この地下熟成タンクです。機能的な作りになっています。



夫妻
醸造を担当するご主人も優しそうな方で、2人並んだ写真を撮らせて欲しいと頼むとちょっと照れた様子ながらソファに座り、にっこり。この仲の良さもワインの味に影響するのかもしれません。




パプ城
これが、今は廃虚となっているシャトー・ヌフ・デュ・パプ。



パプのセラーマスター
試飲のワインを注いでくれるセラーマスター。



パプ村
シャトー・ヌフ・デュ・パプ村はこんな感じののどかな田舎です。



パプの畑
丘の畑は、こんな岩だらけ。じゃがいもみたいです。



風に向う吾郎
それにしてもこの日はミストラルが強く、「HPで見てもらうために、どれぐらい風が強いかの写真を撮ろう」と主人が風に向かうと、来ていたシャツの裾がハタハタハタと強く風になびくのです。実は、蔵へのお土産に「南部風鈴」を買ってきたのですが、これは失敗でした。うるさくてかなわんわ・・。






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