|
●2002年8月28日(水) ドメーヌ・ド・ギシャルド
さて、今日は3件の蔵を回ります。まず1件目は、ドメーヌ・ド・ギシャール。昨日通ったシャトー・ヌフ・デュ・パプ村を過ぎ、さらに北上。山の中をちょっと迷いましたが、なんとか蔵に着きました。ここは、35haの畑を所有する家族経営のワイナリー。1980年から父親の仕事を引き継いだアルノー・ギシャールさんが、奥さんのイザベルさんと、収量を抑えたワイン造りを行っており、ロバート・パーカーの「ローヌワイン」で4つ星の評価を得ています。
ご挨拶のあと、早速畑を案内してもらいました。畑に続く道を歩いていると、すごい勢いで白くて大きな犬が横を走りすぎました。ここの看板犬?のオリーブちゃんがご主人に追いつき、こちらを見て嬉しそうに尻尾を振っています。広大な畑の中で放し飼いにされているためか、おおらかで人懐っこくとってもかわいい!こんなところで飼われる犬は幸せですね。
畑の中では、猪の足跡がついていました。良く出没して葡萄を食べてしまうそうです。また、30センチくらいの小さな蛇がいました。びっくりしましたが、健康で安全な畑の証拠でもあると思いました。
見せてもらった畑は、比較的若い樹が植えられていました。きれいに実った葡萄樹の畝の間には、わざと雑草を生やしているとのこと。若い樹は活発に活動し、必要以上に養分を蓄え過ぎるので、雑草と養分の吸収を争わせてコントロールするそうです。そういえば、去年行ったドイツの州営の実験畑でも畝の間に芝生を植えてデータを取っていたなあ。このブロックの葉は青々としているのですが、道を挟んで反対側の畑は、葉が黄色がかって少し枯れかかっているものもあります。この違いは、表面からは見えない、土壌の下部に違いがあるとのこと。フランスでは灌漑が禁止されています。表面は乾いているように見えていても土壌の下の方では水分を含んだ層があり、葡萄は土壌の下部の水分や養分を求めて根を下に下にと伸ばすのです。ところが、この反対側の畑は土壌が少し違い、途中に岩の層があるため水分を貯める力が前出の畑よりは少なく、同じ気象条件でもこのときのように少し枯れてしまうこともあるそうです。
たわわに実ったグルナッシを食べてみました。お日さまに温められた葡萄は、ぽってりとした甘さがあっておいし〜い!ワイン用の葡萄は食べても美味しくないと聞いたことがあったのですが、そんなことはないです。葡萄の粒はデラウェアをひとまわり大きくしたくらい。その大きさに対しては、皮は確かに厚いので、食用とはやはり違うとは思いました。次にシラーを食べてみると、こちらもとても甘いのですが、グルナッシュの甘さとはわずかに違いました。この微妙な差がワインになった時にも、(当たり前ですが)差になるんですね。
次にセラーを見学。温度管理できるステンレスタンクが7本立ち並び、タンクの上部に行ける安定した足場が造られています。タンクは1本1万リットル入るそうです!天井には、タンクの中で浮き上がってきた葡萄の皮を沈めるための機械が取り付けてあり、これは稼働式になっていて、順番に全てのタンクに使えるようになっていました。
次にテイスティング・ルームへ。 アルノーさんが見せてくれた写真には→上半身裸で葡萄を踏む男性が写っています。「97年まではこんなふうにしてたんだよ。」えっ〜?!そんな最近までこんな造り方してたのかあ・・。びっくり。この足踏み作業は、最初は葡萄の種が足に当たって痛いそうなのですが、しばらくやっていると葡萄が潰れて柔らかくなり非常に気持ちが良く、マッサージ効果が得られるため、やらせて欲しいという女性が多いそうです(笑)。
ワインは、AOCコート・デュ・ローヌの赤・白をいくつか飲みました。このワイナリーの特徴なのか、ローヌのイメージからするとどれもエレガント。力強いというタイプではなく、上品にまとまったタイプです。印象に残ったのは「シラー」とだけ書かれた非常にシンプルなラベルのもの。ローヌ北部のワインを思わせるような、酸のバランスがきれいにとれた1本でした。
●ラ・バスティード・サン・ヴァンサン
今日2件目の訪問は「ラ・バスティード・サン・ヴァンサン」。道路沿いに立っているドメーヌの看板を曲がると、こんもりときれいに切りそろえられた木々があり、その奥にテイスティングルームと住まいがあります。小さなテーブルとイスが出してあって、入口には葡萄の蔦がからまり、センスの良さが感じられました。
←これがドメーヌ入口。かわいいでしょ?
まだ30代であろうオーナーのギー・ダニエル氏が出迎えてくれました。彼はネゴシアンで働き、その後、小作人だった祖父が1980年代に創業したこのワイナリーを継ぎました。わずか20年でパーカー4つ星生産者となったのです。畑は6つの村に点在しますが、このドメーヌのまわりももちろん畑に取り囲まれています。
テイスティング・ルームには、いかにも南仏といったラベンダー畑などの風景の、素敵な写真がいっぱい飾られていました。この写真は、この蔵のワインメーカーが撮ったもので、彼はワインメーカーと写真家という二足のわらじを履いているそうです。なるほど、どことなくこの蔵に漂うスタイリッシュな感じは、アーティストでもある彼の影響があるのかも?
まずはティスティングです。ここでは、ジゴンダス、ヴァケラス、コート・デュ・ローヌ、ヴァン・ド・ペイ・ヴォークリューズを造っています。この蔵で一番印象に残ったのが、「コート・デュ・ローヌ ロゼ」。ヴィンテージは確か01だったと思います。ワインコンクールで金賞を3つも獲得したもので、やや濃いめの赤よりのピンク色。果実味とコクのある辛口ロゼで、ブラインドで飲んだら軽めの赤と言ってしまうかもしれない非常に力強いワインです。これは脂ののった鴨の料理に合わせてみたいと思いました。赤だと旨味がタンニンで覆われてしまうような気がしますが、このぐらいの強さのロゼならきっとぴったりのはず!
では畑とセラーを見に行きましょうということで、外に出たところ、入口の道沿いには白葡萄が植えられていました。ワイン用にも食用にもするシャスラでした。「食べてもいいですか?」と聞いたら、「取ってあげますよ」と言われて、?と思っていたら、ハサミと段ボールを持って出てきて摘んでくれるんです。ああ〜、味見だけでいいのに〜、と遠慮するのも構わず、ずっしりと重い段ボールいっぱいの葡萄をもらってしまいました・・。シャスラにマスカット、それにマスカット・ノワール。このマスカット・ノワールは、黒葡萄なんですが、食べるとちゃんとマスカットの味がするのでした。
車で5分ほど走って、セラーに着きました。手狭になったため新しく造ったというセラーの中は空っぽ。でも、セキュリティ・システムだけはしっかりと作動しています。何でもこのあたりは、フランスでも泥棒が多い場所らしいのですが、ワイン盗む泥棒っていうのもねえ・・(笑)。小さな中庭を挟んで、現在使用中のセラーを見せてもらいました。ここに限った話ではないんですが、ワイン蔵って、思うより道具が少ない。ボルドーなどに行けば樽がダッーと並んでいて圧巻なんでしょうが、ローヌではそれもなく、数個の樽が隅っこに控えめに並んでいるだけです。破砕機、醸造タンク、熟成タンク、圧搾機、フィルター、樽、パレット積されたボトル・・。ボトリング、ラベリングは専用の業者がやってくるそうで、この機械は高いうえに毎年機能が向上し、買うより借りる方が効率がいいそうです。ワインは大昔からあった飲み物でもあり、原理的には葡萄を潰しておけば造れるもので、単純と言えばそうかもしれません。でも、だからこそ、人の努力や工夫がてきめんに品質に現れるものなのだと思いました。
中庭で写真を撮っていると、お父さんがやって来られました。2人並ぶとやっぱり親子です、似てます。
さて、そしてセラー裏の畑へ。この日はミストラルがとても強くて、弱めの台風といった感じですが、葡萄も葉っぱも吹き飛ばされないのが偉いですね。この畑が面白いのは、畑の中の道を隔ててAOCが違うこと。ほんの3メートルほどの小道で、土壌が違うともましてや気候が違うとも全く思えないんですが、AOCっていうのは非情なものです。まあどこかで線引きがあるのは当然ながら、まさかこの程度の小道で分かれているなんて想像を絶していました・・。

次のページへ続く
|